約40年ぶりに相続法が改正!

 昨年7月に相続法が大きく改正されました。昭和55年に改正されて以来、実に約40年ぶりとなる改正ということもあり、大きな注目を集めています。
相続法の大きな見直しがされなかった約40年の間に日本人の平均寿命が延びたことで社会の高齢化が進み、相続人と被相続人がともに老齢である「老老相続」が増加していました。そして、このような社会情勢の変化に伴い従来の相続法が現代社会と合わなくなり、近年は高齢になってから相続をすることになる配偶者を保護するための法律の必要性が高まっていました。
今回の法改正では配偶者の居住の権利を保護するための方策や自筆証書遺言の方式緩和など、改正項目が多岐にわたって盛り込まれており、今年の7月1日から施行されています(一部の規定を除く)。
改正内容を理解し、円満相続を実現しましょう。改正の主なポイントは次の6つです。

①配偶者居住権の新設

 配偶者が相続開始時に被相続人所有の建物に居住していた場合、配偶者は遺産分割において配偶者居住権を取得することで終身または一定期間、その建物に無償で居住できるようになります。また、被相続人が遺贈等によって配偶者に配偶者居住権を取得させることもできるようになります。
※令和2年4月1日に施行されます。

事例
相続人が妻及び子、遺産が自宅(2,000万円)及び預貯金(3,000万円)だった場合
妻と子の相続分=1:1(妻2,500万円 子2,500万円)
※現行制度では配偶者が居住建物を取得する場合、他の財産を受け取れなくなってしまう。

配偶者は自宅での居住を継続しながら、その他の財産も取得できるようになります!

②婚姻期間が20年以上の夫婦間における
 居住用不動産の贈与等に関する優遇措置

 婚姻期間が20年以上の夫婦間で居住用不動産(居住用建物またはその敷地)の遺贈または贈与がされた場合、原則として、遺産分割における配偶者の取り分が増えます。
※令和元年7月1日施行

事例
相続人が妻及び子、遺産が自宅(2,000万円)及び預貯金(3,000万円)だった場合
妻と子の相続分=1:1(妻2,500万円 子2,500万円)
※旧制度では夫から配偶者(妻)に自宅を生前贈与していた場合でも、夫が亡くなった時は原則として遺産の先渡しを受けていたものとして取り扱われていたので、配偶者は自宅のほかに500万円の預貯金しか受け取れなかった。

生前贈与分については相続資産としてみなす必要がなくなるので、生前贈与がなかった場合に行う遺産分割よりも妻の取り分が多くなる!

③預貯金の払い戻し制度の創設

 預貯金が遺産分割の対象となる場合、各相続人は遺産分割が終わる前でも一定の範囲で預貯金の払い戻しができるようになりました。
※令和元年7月1日に施行
※最高裁の判例では、遺産分割が終了するまで相続人単独で預貯金の払い戻しができませんでした。

①家庭裁判所の判断を経ずに払戻しができる制度の創設
遺産に属する預貯金債権のうち、一定額については単独での払い戻しが認められるようになりました。
相続開始時の預貯金債権の額【口座基準】×1/3×相続人の法定相続割合=単独での払い戻し可能額
※1つの金融機関から引き出せる上限額は150万円まで。
②保全処分の要件緩和
仮払いの必要性があると認められる場合、他の共同相続人の利益を害しない限り、家庭裁判所の判断で仮払いが認められるようになりました。(家事事件手続法の改正)

④自筆証書遺言の方式緩和

 自筆証書遺言(自分で手書きする遺言書)の「財産目録」については、手書きで作成する必要がなくなりました。
※平成31年1月13日に施行
※旧制度では自筆証書遺言の全文を手書きしなければなりませんでした。

財産目録には署名押印しなければならないので、偽造も防止できます!

⑤法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設

 自筆証書遺言を作成した方は、法務大臣が指定する法務局に遺言書の保管を申請できるようになりました。
※令和2年7月10日に施行されます。

 遺言者が死亡した後、相続人や受遺者らは全国の遺言書保管所で、遺言書が保管されているかどうかを調べることや遺言書の写しの交付を請求することができます。また、遺言書を保管している遺言書保管所で遺言書を閲覧することができます。
※遺言書保管所に保管されている遺言書については、家庭裁判所の検認が不要となります。
※遺言書が閲覧されたり遺言書情報証明書が交付されたりすると、遺言書保管官は他の相続人に遺言書を保管している旨を通知します。

⑥「特別の寄与」制度の創設

 相続人以外の被相続人の親族が無償で被相続人の療養看護等を行った場合、相続人に対して金銭を請求できるようになります。
※令和元年7月1日に施行

事例
亡き長男の妻が、被相続人の介護をしていた場合

介護等の貢献に報いることができ、実質的公平が図れます!

相続法改正の詳細につきましては、法務省のホームページをご覧下さい。 www.moj.go.jp

 毎月、当JAでは「相続・資産相談会」と「相続等の無料法律相談会」を開催しております。相続のことでわからないことや気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。なお、開催日につきましては、広報誌「JAみな穂」のカレンダーコーナーにてお知らせさせていただきます。※「相続等の無料法律相談会」につきましては事前予約が必要となります。ご希望の方は、最寄りの支店までお申込みください。

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